写真右奥の清水町市街から国道274号を使って写真撮影地の美蔓パノラマパークに来る場合、佐幌川や十勝川を横切りながらいくつかの階段状の丘(段丘)を走ることになります。段差は、数メートルだったり数十メートルだったりいろいろです。
普通はそんなことを意識しないと思いますが、佐幌川の両側の平らなところから坂を上がると、また平らなところを走ります。坂を下って、また平らなところ。十勝川を渡って、美蔓台地への坂を上りきる手前にビューポイントパーキングのひとつ美蔓パノラマパークがあります。
- ビューポイントパーキング
- 安全な駐車場と、そこから歩いて行ける美しい風景の撮影スポットの情報をホームページなどで情報提供する取組です。ふと立ち止まりたくなるような北海道らしい酪農風景、田園風景そして花畑など景観に優れた駐車場です。
- - 国土交通省北海道開発局 ビューポイントパーキングとは?
扇ヶ原展望台や双岳台駐車帯、開陽台駐車場、裏摩周展望台なども、道道が国道に昇格したとか、道幅を拡幅したとか、舗装したとか、道路に関する整備の過程でビューポイントパーキングになったと思われます。
1984年10月、87年8月、91年8月、93年9月……美蔓パノラマパークに寄った時の天気はあまり良くなくて、青空の下、日高山脈を背にした十勝の田園風景を一度は見てみたいものです。ウェブ上で写真を見れますが、自分の目で脳で認識する景色とは違いますからね。
十勝川によって作られた段丘地形

遠くの山々は、2年前の夏に来た時には全く見えなかった日高山脈。写真中央の二つの山影の右方向に日勝峠があるのか?手前の畑作地帯は、写真右から左に流れる十勝川によって削られてできた河岸段丘に広がっている。段丘面から約40[m]高い段丘崖にビューポイントはあるが、見下ろしている感はない。1993年9月撮影(レンズ付きフィルム・パノラマ)。
美蔓パノラマパーク前の坂を上りきった平坦なところは、地質の界隈では美蔓台地と呼ばれています。約70万年前、日高山脈南部や十勝北部の山地が激しく上昇し、急流となった川によって流されてきた礫の地層が現在まで残っている古い扇状地面です。
山地から十勝の平地に入ってきた川の流れは遅くなり、大きな礫から流されなくなって溜まっていきます。川は流れを変えながら礫を広範囲に堆積させて扇状地をつくり、約80万年前に湿原だった十勝中央部は埋め立てられ、十勝平野の原形ができました。
美蔓台地は、十勝平野の原形となる扇状地礫層という地層が河川によって削られることなく現在まで残っている土地。その西側は十勝川によって、東側は然別川によって削られて沈み込んだため、周囲の土地より標高が高く、台地となっています。
上の写真で緑色に見える畑作地帯が広がっている平坦な土地は、美蔓台地西側の十勝川左岸の段丘面で、地質の界隈では鈴蘭面と呼ばれています。写真奥に向かって、鈴蘭面の先に一段低い大和面、その先にさらに一段低い十勝川が流れる氾濫原面があるのですが、写真からは見分けることができません。
いかにもわかっている風ですが、段丘(河岸段丘)という言葉は『ブラタモリ』で知りました。十勝の平野や川ができるまでや新得の5万分の1地質図幅説明書を読み、地理院地図の色別標高図で土地の凸凹を確認し、ストリートビューで国道274号沿いを見てみました。
何十万年も前の礫層が残っている美蔓台地にある美蔓パノラマパークから眺めた段丘地形。山から川によって礫が運ばれて来て湿原が埋まり、礫の扇状地が川によって削られて段丘が生まれ、扇状地や段丘の上に降り積もった恵庭火山や支笏火山などからの火山噴出物。ここから見える田園風景は、山と川のコラボレーションから生まれたのですね。