2型糖尿病のリスク因子
2型糖尿病は、インスリン分泌低下とインスリン抵抗性を来たす複数の遺伝因子に、加齢や肥満(過体重)、運動不足などの環境因子が加わって発症します。
その過程でインスリン作用は少しずつ足りなくなり、血糖値は正常域から境界域へ、境界域から糖尿病域へと上昇していきます。
糖尿病発症のリスクが高い人は、空腹時血糖値やHbA1cが「正常域」と「境界域」のボーダー近辺から「境界域」と「糖尿病域」のボーダー近辺までのゾーンに隠れています。
発症リスクが高い人を的確に見つけ出すためにはもうひとつ、耐糖能の判定基準としてOGTT2時間値が必要です。
血糖レベルは正常より高いが糖尿病と診断されるほど十分には高くない、俗に言う「糖尿病予備軍」、正確には耐糖能が境界型と判定された耐糖能異常の人は、発症リスクが高いです。
米国では「prediabetes(「前糖尿病」状態)」と呼ばれ、この状態に留まる人もいれば、糖尿病になってしまう人もいます。それでも血糖レベルが正常な人と比較すれば、発症のハイリスク群であることは明らかです。
発症するかしないかは、後から加わる環境因子の影響も大きいと考えられ、そのようなリスク因子がいくつかあります。
耐糖能異常
糖尿病なのか、それとも発症リスクが高いのか、あるいは正常なのか、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)で耐糖能(=口から摂取したグルコースが血液中からどれほど速く処理されるか)を調べることにより的確に見つけ出すことが可能です。
- 境界型
-
耐糖能が正常型にも糖尿病型にも属さないもの。
- 空腹時血糖値:110[mg/dl]~125[mg/dl]
- OGTT2時間値:140[mg/dl]~199[mg/dl]
OGTTの結果、境界型と判定された耐糖能異常の人は、糖尿病発症のハイリスク群に属していると考えられます。この群から糖尿病に進展する人の割合は、1年間で約5[%]です。
OGTTは手間と時間がかかるので、空腹時血糖値とそれに対応するHbA1cの検査を用いたスクリーニングが簡単です。
- 確実にハイリスク群
-
OGTTを受ければ糖尿病型と境界型として検出されるであろう、現在、糖尿病の疑いが否定できないグループ。
- 空腹時血糖値:110[mg/dl] ~ 125[mg/dl]
- HbA1c(NGSP):6.0[%] ~ 6.4[%]
- ハイリスク群を含む
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OGTTを受ければ境界型と正常型として検出されるであろう、現在、糖尿病でなくとも将来発症するリスクが高いグループ。
- 空腹時血糖値:100[mg/dl] ~ 109[mg/dl]
- HbA1c(NGSP):5.6[%] ~ 5.9[%]
リスク因子
2型糖尿病の発症リスクには、
- 自分ではどうすることもできないリスク因子
- 自分で変えることができるリスク因子
の2種類がありますが、このことを踏まえて、少しずつでもリスク因子の中身を改善する努力を続けることが発症予防につながります。
自分では変えられないリスク因子
- 年齢:45歳以上。
- 糖尿病家族歴:父母兄弟姉妹の中に糖尿病患者がいる。
自分で変えられるリスク因子
- 過体重
-
BMI(ボディマス指数)≧25[kg/m2]
- 身長[cm] / 体重[kg] at BMI=25
- 150 / 56.2
- 155 / 60.0
- 160 / 64.0
- 165 / 68.0
- 170 / 72.2
- 175 / 76.5
- 180 / 81.0
- 185 / 85.5
- 190 / 90.0
妊娠糖尿病の病歴または巨大児出産の経験がある。
- 高血圧
- 血圧≧140/90[mmHg]
- 脂質代謝異常
- HDLコレステロール<35[mg/dl]またはトリグリセリド(中性脂肪)>250[mg/dl]
- 運動不足
- 自覚があるのであれば、そうです。
これらリスク因子の影響を少なくするための方法は、糖尿病治療の基本と同じで、結局は「食事」と「運動」に行き着きます。
過体重は「食事」と「運動」で改善が見込まれ、これらは高血圧や脂質代謝異常にも効果があります。もし減量の必要があるのであれば、過体重をターゲットにして改善するのがよいと思います。