「前糖尿病」状態と身体活動

2型糖尿病の発症予防や発症を遅らせるためのステートメントとして、次の2つの条件を満たす人では、

総摂取エネルギー量を適正化し、生活習慣の改善により体重を5~10[%]減らすことが推奨されており、広くコンセンサスが得られています。

ステートメントとは、患者全体を見た時の一般論としての医療指針のことです。

「痩せているので、体重を減らせと言われても……」という人には、次のようなステートメントがしっかりと載って(「科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン」:Mindsで公開)います。

運動は、体重減少とは独立して糖尿病発症を予防する。

また、1日を通して座っている時間が長いなどの身体活動量が低下している人も糖尿病の発症リスクが高く、痩せている人や運動不足の人にも有効な糖尿病予防のための具体的な運動が提言されています。

ウォーキングなどの有酸素運動を週に150分以上行う

買い物や家事、階段の昇り降り、通勤などの生活活動ではなく、目的を持って意図的に行う運動、特に有酸素運動は、体重減少やその他の2型糖尿病発症のリスク因子の抑制にも役立ちます。

  • 高血圧の人
  • 脂質代謝異常の人
  • 運動不足の人

糖尿病発症のハイリスク群を対象にした臨床研究「Diabetes Prevention Program(DPP)」では、2型糖尿病の発症は、食事と運動を通した体重減少により遅らせるか予防できることが示されました。

しかし、研究のアウトカムを得るために、食事と運動について生活習慣改善の1対1の強力な個別指導を半年間行っても、目標とする体重減少を達成できたのは半数でした。4人に1人は、週150分以上の運動目標を満たせませんでした。

運動ができない理由は真っ先に口に出るものなのに、「では、どのようなことならできますか?」と聞かれたとたん口ごもってしまうくらい中年のおじさんおばさんにとって身体を動かすのが嫌いなことは、よくわかります。

運動しようと前向きな気持ちになれるような考え方やヒントをひとつふたつ……。

有酸素運動

「有酸素運動」になるエクササイズは、

  • ウォーキングやジョギング
  • エアロビクスダンスやステップエクササイズ
  • 水泳やアクアビクス
  • サイクリングやエアロバイク
  • ハイキングやクロスカントリースキー

など、長時間続けられるような軽度から中程度の運動強度で行うのが良いとされます。

有酸素運動の効果

有酸素運動の運動自体の効果、

  • 心臓や筋肉、骨を強くする
  • 血液循環を改善し、臓器や筋肉の調子を整える
  • 身体や関節の柔軟性を維持する
  • 体脂肪を減少させる

ことによって、心肺機能や体力の向上、加齢や運動不足で生じる筋肉量の減少や骨粗鬆症の予防、体重減量や肥満の改善が期待できます。

また、積極的な有酸素性エネルギー代謝により脂肪(脂質)を消費するので、血中のLDLコレステロールやトリグリセリド(中性脂肪)を減少、HDLコレステロールを増加させ、脂質代謝異常の改善効果をもたらします。

さらには、血糖レベルや高血圧の改善効果も期待でき、結果として2型糖尿病や心疾患、脳卒中の発症リスクを低減させます。

目標は、ウォーキングなどの有酸素運動を1週間に5日以上、1日に少なくとも30分間は継続して行えるようになることです。

  • ゆっくり始める

    最初は、ほぼ毎日5分間歩くことから始めます。5分間なら歩ける気がしませんか。これを毎日できるようにします。膝や足首、腰などに違和感を感じるようなら、無理せずに止めます。

  • 1日のうち、歩く機会を見つける

    買い物などの時、入口から離れた所に車を停めて歩く。勤務先の一駅または二駅手前で降りて、残りは歩く。エレベーターやエスカレーターを使わずに階段を昇り降りする。犬の散歩をする……など。

  • 目標に近づける

    体力が付いてきたところで、より長い時間、少し速足で歩きます。ここでも無理はせずに少しずつ強化していきます。意外と直ぐに目標を達成できるはずです。

  • 楽しんで行う

    ウォーキングだけでは飽きてきますから、休日にハイキングに行ったり、興味のある地域の街歩きをしたり、ポジティブな気持ちになれることもトライしてみます。

有酸素運動の評価は、血糖や血圧、血中脂質の値がどう変化したかによる代替的な有効性で判断するのだろうと思います。

評価が良ければ、結果として2型糖尿病の発症リスクは減っているということですから、自信を持って有酸素運動を継続します。