健康的な食事を摂るためのヒント
2型糖尿病の発症予防や発症を遅らせるためのステートメントとして、下記は広くコンセンサスが得られています。ステートメントは、患者全体を見た時の一般論としての医療指針のことです。
耐糖能異常と過体重・肥満を有するハイリスク群では、総摂取エネルギー量を適正化し、生活習慣の改善により体重を5~10[%]減らすことが推奨されている。
このステートメントの対象は、次の2つの条件を満たす人です。
さて、時に「糖尿病になったのは自己責任だ」と声高に叫ぶ、未だに贅沢病と思っている人もいますが、実は2型糖尿病は多因子遺伝疾患であり、環境要因の他に遺伝要因も発症に関係していると考えられています。
糖尿病家族歴がある人は、確率的に糖尿病発症の遺伝的素因を持っている可能性が高いのですが、遺伝因子として遺伝子異常がほとんど同定できていないことから、実際に持っているかどうかはわかりません。
その遺伝的素因を持っていたとしても、後天的な環境要因との相互作用の程度によって、発症しない場合や発症が遅れる場合が起こっているはずです。
一方で、家族歴が無くても多くの人が発症している訳ですから、影響の小さい遺伝因子であっても複数が関与することで、発症リスクが高まると考えるのが多因子遺伝疾患です。
結局のところ遺伝要因を減らそうとしても不可能ですが、遺伝要因に作用する環境要因の多くは、自分の努力で何とかできることがほとんどです。
食事は、環境要因の中で自助努力で何とかできることのひとつです。何を食べるか、どの位の量を食べるか、いつ食べるか、賢く選択することによって、健康的な体重の維持はもちろん体重減量や糖尿病予防効果も期待できます。
目標は体重の5~10[%]減量
まずは、自分の今の体重から、その5[%]から10[%]分を落とすことが目標です。
ですから、減量後の体重が過体重(22<BMI<25)や肥満(BMI≧25)のままでもかまいません。ただし、減量後の体重を維持する必要はあります。
注意すべきは、血糖値を下げるための「食事」、糖尿病患者のための食事療法ではないことです。本質を理解しないと、「糖質制限中なので寿司のシャリを食べません」とか「毎食事白米抜き」なんて極端なことをやりがちです。
健康的な食事を摂って痩せることに関しては、今現在の自分の「食事」に対して何をどうするかという視点が重要で、次の3つのステップを踏まえて実行すると良いと思います。
-
1日で消費するカロリーに対して、より少ないカロリーを摂る。
エネルギー収支を「摂取エネルギー<消費エネルギー」にして体重を減らしたいので、今現在の自分の「食事」から部分的にカロリーを抜き取ります。
-
今現在の「食事」と比較して、より少ない脂肪を摂る。
脂肪のカロリーは、炭水化物とタンパク質の4[kcal/g]にくらべ9[kcal/g]と重量あたりの熱量が大きいので、「抜き取る」効果が高いです。
-
今現在の「食事」と比較して、高脂肪・高カロリー食品の種類や中身を変更したり、量を減らす。
たとえば、鶏肉は牛肉や豚肉にくらべ脂肪の割合が低いですし、牛肉や豚肉でも脂肪の少ない部位があります。また、低脂肪牛乳やヨーグルト、ノンオイルのドレッシング、カロリーオフの飲料や食品に変更するのも手です。
糖尿病予防効果がある食品
2型糖尿病の発症予防や発症を遅らせるためのステートメントとして、さらに、
食物繊維を多く含む未精製穀類や低GI(glycemic index)食品、緑色野菜、魚などの食品は、糖尿病予防効果があることが示唆されている。
コーヒー摂取は、糖尿病発症の予防因子である可能性が高いが、指導に取り入れるまでのコンセンサスは得られていない。
肉だけでなく野菜や魚も好き嫌いなく食べるのがよい、ということだと思います。
健康的な食事のヒント
ヒントは、下記で挙げた他にもたくさんあるはずです。できることの2つ3つを選び、今日から始めましょう。
- 毎日同じ時間に食事や軽食を食べるようにする。
-
1枚のプレートに盛り付けることにより、量を減らした食事がより多くに見えるようにする。
- 時間をかけて食べるようにする。胃から脳へ満腹感が伝わるまで、約20分かかる。
- 飲酒は、食欲のコントロールをできなくさせるので、摂取量を適量にとどめる。もし飲酒する場合は、カロリーオフや糖質オフのアルコール飲料を選択する。
- 油で揚げる調理や油で揚げた食品を避ける。
- クッキーやケーキ、アイスクリーム、スナック菓子などは高カロリー食品である上、誘惑に負けて食べたくなる食べ物です。これらは、身の回りに置かないようにする。
- 飲み物は、水やお茶、無糖のコーヒーや炭酸水にする。
- 多くの食品には栄養成分の表示があるので、低カロリーの食品を選ぶようにする。