HbA1cはグルコースが非酵素的に結合したヘモグロビン - だぶるくれーどる

HbA1cはグルコースが非酵素的に結合したヘモグロビン

HbA1c(ヘモグロビンA1c)は、過去1~2ヶ月の平均的な血糖レベルを表すことから糖尿病の有無の判断基準として、あるいは血糖コントロールの状態を表す指標として用いられています。

    糖尿病が有る場合

    下記1.と2.の両方が糖尿病型のとき

    1. 空腹時血糖値、または75[g]OGTT2時間値
    2. HbA1c

HbA1cは、ヘモグロビンにグルコースが非酵素的な反応で結合したヘモグロビンの一形態です。

  • ヘモグロビン + グルコース → ヘモグロビンA1c(HbA1c)

血液中のグルコース濃度(=血糖値)が高いほど、ヘモグロビンがグルコースに曝される時間が長いほど、HbA1cの生成反応は進みます。したがって、HbA1cは血糖レベルと正の相関関係を示します。

血糖値を2ヶ月間連続モニターして平均血糖値を算出することは現実的ではないですが、このような意味合いを持つ指標がHbA1cです。

  • HbA1c[%] ≒ 2ヶ月間連続計測した血糖値を平均化した指標

過去の日本のHbA1c(JDS値)を他国のHbA1c(NGSP値)と比較する場合、換算式で変換可能です。

  • HbA1c(NGSP)[%] = 1.02 × HbA1c(JDS)[%] + 0.25

HbA1cの実体とその生成反応

HbA1cは、ヘモグロビンをクロマトグラフィーにより成分毎に分離したうちのHbA1c画分が出発点です。

後にこの画分は、ヘモグロビンAのβ鎖N末端にグルコースが結合したヘモグロビンであること、そして、血糖レベルの上昇と相関して増加することがわかりました。

この性質によって、研究、臨床を問わず、血糖コントロールの状態を評価する指標として用いられてきました。

しかし、HbA1c測定体系の標準物質が違えば、HbA1cの内容や数値の意味が異なるという不都合が生じ、化学物質としてのHbA1cが定義され、標準化が図られました。

HbA1cと糖尿病の交差

初めてHbA1cという語句が登場したのは、1958年に発表された論文、Observations on the chromatographic heterogeneity of normal adult and fetal human hemoglobin: a study of the effects of crystallization and chromatography on the heterogeneity and isoleucine content. でした。

当時は、「ヘモグロビンAのノイズ成分のようなもので、別に気にするようなことではない」と解釈されていたようです。

それが約12年後、HbA1cと糖尿病の間に何らかの関係があることがわかりました。関係が明らかになっていった経緯は、次のとおりです。

1958年

陽イオン交換樹脂を用いたクロマトグラフィーにより分画された、成人(adult)型のヘモグロビンAの画分が報告されました。

ヘモグロビンAの主要成分としてHbA0が、微量成分としてHbA1が分画され、後者はさらに分画され、分離順にHbA1a、HbA1bHbA1c、HbA1dと命名されました。

ヘモグロビンAの画分
  • HbA0:主要成分
  • HbA1:微量成分
    • HbA1a
    • HbA1b
    • HbA1c
    • HbA1d
1966年

ヘモグロビンAのHbA1c画分は、ヘモグロビンAのβ鎖アミノ基末端に未同定の原子団がシッフ塩基結合している構造であることが示されました。

1968年

ヘモグロビンAのHbA1c画分のβ鎖には、六炭糖(ヘキソース)が付加されていることが実証されました。

1968年~1973年

糖尿病患者の赤血球をデンプンゲル電気泳動法を用いて分離したところ、その中に異常なヘモグロビンを認めました。

これは後に、1958年に報告されたヘモグロビンAのHbA1c画分と同じものであることがわかりました。

また、糖尿病患者のヘモグロビンAのHbA1c画分が増加していることが報告されました。ここで初めて、糖尿病とHbA1cが関連付けられたのです。

1975年

ヘモグロビンAのHbA1c画分は、ヘモグロビンβ鎖N末端にグルコースが結合していること、およびその生成反応について明らかになりました。

1976年

糖尿病患者の糖代謝状態が悪いとヘモグロビンAのHbA1c画分が増加し、良いと減少することから、糖代謝コントロールの程度をモニターするためにHbA1c画分を使用することが提案されました。


さて、糖尿病患者においてはHbA1画分が増加するのですけれども、その中でも特にHbA1c画分が血糖レベルの上昇と相関して増加することがわかりました。

HbA1cの生成反応は、酵素の触媒作用ではなく、グルコース濃度とグルコースに曝される時間に依存することが関係します。

メイラード反応とHbA1c

パンを焼いた時やご飯のお焦げ、味噌が茶色になる現象は、還元糖が酵素の触媒作用無しにタンパク質やアミノ酸と反応して、最終的に褐色物質(メラノイジン)を生成するメイラード反応が関与しています。

メイラード反応

前期段階1.と2.の過程は明らかになっていますが、最終段階のメラノイジンを生成する反応過程は、完全に解明されていません。

  1. 還元糖とアミノ化合物が反応してシッフ塩基を形成
  2. アマドリ転位によりアマドリ化合物を生成
  3. 複雑な経路を通って、メラノイジンを生成

グルコース(還元糖)とヘモグロビン(タンパク質)が結合してHbA1cを生成する反応は、メイラード反応の前期段階に相当します。

一般に、化学反応の成否や速度は、反応温度や反応物の濃度・圧力、触媒の有無などに影響されますが、メイラード反応に酵素の触媒作用は無関係であり、生体内における反応条件は、一定とみなすことができます。

不安定型HbA1cの生成反応

グルコースのカルボニル基 -C(=O)- がヘモグロビンAのβ鎖N末端のアミノ基 -NH2 と反応し、炭素-窒素二重結合を持つ化合物である不安定型HbA1cおよび水H2Oを生成します。反応は可逆的です。

安定型HbA1cの生成反応

不安定型HbA1cにアマドリ転移(Amadori rearrangement)が起こり、炭素-窒素二重結合に隣接するヒドロキシ基の水素Hが窒素Nへ再配置され、カルボニル基 -C(=O)- を持つケトンである安定型HbA1cを緩徐に生成します。反応は不可逆的です。

血中グルコース濃度(血糖値)が高くなったとき、平衡状態は、HbA1c生成方向(右方向)に傾きます。そして、シッフ塩基である不安定型HbA1cは、血糖値が下がれば容易に左方向に傾きます。

つまり、血糖レベルが常に高い糖尿病患者の平衡状態は、シッフ塩基の不安定型HbA1cがアマドリ転位を起こして、不可逆的な安定型HbA1cを生成する方向に傾いています。

HbA1cの測定は、このような血糖値の影響を受けないように、シッフ塩基の不安定型HbA1cを除去して、安定型HbA1cのみを測定対象とする必要があります。

生体内におけるメイラード反応の進行は緩徐で、酸化・脱水・縮合などの複雑な反応を経て、アマドリ化合物から分解される反応中間体や生成物と体組織(のタンパク質アミノ酸残基など)が重合して、最終的にメラノイジンを含む終末糖化産物(AGEs; advanced glycation end-prpducts)を形成します。

HbA1cの化学物質としての定義

HbA1cは、クロマトグラフィーの原理により成人型のヘモグロビンAから分離された物質で、後にそれは、ヘモグロビンβ鎖N末端にグルコースが結合したグリコヘモグロビンであることがわかりました。

グルコースはβ鎖N末端以外の部位にも結合しますので、結合数や結合部位、結合状態が異なるグリコヘモグロビンが、生体内に多種存在することになります。日本では、そのうちの1種をHbA1cと定義しました。

日本のHbA1c測定体系におけるHbA1cの定義

ヘモグロビンβ鎖N末端バリンのアミノ基にのみグルコースが共有結合したヘモグロビン

  • グルコースの結合部位:明示された1箇所のみ
  • ヘモグロビンに結合しているグルコースの数:1個
  • グルコースの結合状態:安定型

定義されたHbA1cは、KO500法という陽イオン交換樹脂カラムを用いたHPLC(高速液体クロマトグラフィー)法により単離測定が可能です。

KO500法により定義に基づいた新たな標準物質の値付けが可能ですが、過去のHbA1c値と継続性および整合性を維持するため、以前の標準物質で校正することにより、HbA1c測定値の数値の持つ意味に差が無いように標準化が図られています。

以前のHbA1c測定体系には化学物質としての定義が無く、各国独自にHbA1cの標準物質(長さで言えばメートル原器のようなもの)を用意して、アメリカ合衆国のNGSP(National Glycohemoglobin Standardization Program)値や日本のJDS(Japan Diabetes Society)値、スウェーデンのMono-S値のように標準化体系を構築していました。

標準物質の違いは、同一試料を測定した時に同じ値が得られない、というところに表れます。標準物質の内容も違いますし、それにどういう値を付けるのか、化学物質としての定義が無いのですから当然です。

HbA1cの国際標準化は、国際臨床化学連合(IFCC; International Federation of Clinical Chemistry and Laboratory Medicine)によって進められ、そのためのHbA1c測定体系が開発されました。

IFCCが定義した化学物質としてのHbA1c

ヘモグロビンβ鎖N末端バリンのアミノ基にグルコースが共有結合したすべてのヘモグロビン

  • グルコースの結合部位:明示された1箇所およびその他の部位も含む
  • ヘモグロビンに結合しているグルコースの数:1個またはそれ以上
  • グルコースの結合状態:明示された結合部位は安定型

IFCC測定法の第一段階は、ヘモグロビンを酵素エンドプロテアーゼGlu-Cによりヘキサペプチド(ヘモグロビンβ鎖N末端側から6個目のアミノ酸残基まで)に切断します。

第二段階は、ヘモグロビンβ鎖N末端にグルコースが結合した糖化ヘキサペプチドと結合していない非糖化ヘキサペプチドをHPLC/MS(高速液体クロマトグラフ質量分析)またはHPLC/CE(キャピラリー電気泳動法)で定量し、割合(mmol HbA1c / mol HbA0)を算出します。

IFCC値とKO500値は、原点を通る比例関係に有ります。JDS値の標準物質は化学物質としての定義が無かった時代のものなので、KO500値とJDS値は比例関係に無いものの、線形関係に有ります。JDS値とNGSP値は、線形関係に有ります。また、NGSP値とIFCC値も線形関係に有ります。

したがって、JDS値は、NGSP値やIFCC値へ換算式により変換可能で、その逆も可能です。

  • HbA1c(NGSP)[%] = 1.02 × HbA1c(JDS)[%] + 0.25
  • HbA1c(IFCC)[mmol/mol] = 10.93 × HbA1c(NGSP)[%] - 23.5

結局、IFCC値によるHbA1cの標準化は実現せず、NGSP値が事実上の国際標準になりました。

しかし、化学物質としてのHbA1cの定義およびその測定体系を確立し、標準化体系が構築されたことにより、JDS値とNGSP値、あるいはJDS値とIFCC値において、HbA1c値が持つ内容や意味は、同じになりました。

例えば、血糖を良い状態にコントロールすることは、糖尿病合併症の発症と進行を抑える効果があることを示した「糖尿病の大規模臨床研究(DCCT; Diabetes Control and Complications Trial)1983年-1993年」で用いられたHbA1c(NGSP値)、これと日本の臨床で測定されたHbA1cの間で、数値による比較が可能です。

HbA1cと糖尿病の関係

糖尿病患者は、インスリン作用が不足するために血液中のグルコース濃度が高いレベルにあります。

血糖値は正常レベルにまで低く、高血糖に滞在している時間はより短く、というのが治療目標になりますけれども、常に血糖値をモニターできる訳ではありませんから、断片的な血糖値によって治療の効果を評価することは難しいです。

そこで、平均的な血糖レベルを表す指標として、血中グルコース濃度と正の相関関係があるHbA1cが用いられています。

HbA1cと血糖レベル

HbA1cと血糖値の関係は、HbA1cは過去1~2ヶ月の平均的な血糖レベルを反映する、と言われます。

DIABETES CARE 誌に掲載された論文 The Response of GHb to Stepwise Plasma Glucose Change Over Time in Diabetic Patients(pdf)を見ると、なぜ「過去1~2ヶ月」という期間限定なのか、おおよそわかります。

図1.階段型血糖値変化に対するHbA1cの応答:10人のインスリン非依存性糖尿病患者に対して、階段状に血糖値を変化させたときのHbA1cの応答を解析した。対象患者の血糖コントロールは非常に悪く、空腹時血糖値は11[mM]以上、HbA1cは10[%]以上であった。対象患者10人のうち、4人にインスリン治療を、5人に経口血糖降下剤投与を、1人は食事療法のみを行い、血糖レベルを急速に正常化した。治療前の平均空腹時血糖値は15.5±2.6[mM]だったが、治療開始1週間後に10.2±2.6[mM]、2週間後に8.1±2.0[mM]、3週間後に7.0±1.2[mM]、4週間後に6.6±0.7[mM]、8週間後に7.0±1.0[mM]、12週間後に6.6±0.8[mM]、16週間後に6.4±0.7[mM]と急速に減少した。治療前の平均HbA1cは12.7±2.5[%]だったが、治療開始4週間後に9.9±1.7[%]、8週間後に8.3±1.1[%]、12週間後に7.3±0.8[%]、16週間後に6.6±0.6[%]と時間をかけて減少した。

図1.は、ヘモグロビン糖化の“系”において、血糖値の時間的変化に応じてHbA1cがどのように変化するのか、ステップ応答を調べた上記論文のデータを基に作成したものです。

対象者は、空腹時血糖値が280[mg/dl](15.5[mM])前後のすぐにでも入院・治療が必要な人たち10人で、短くない期間この状態を持続していたと思われます。

ステップ状入力を与えるために、入院後の治療により血糖レベルを急速に正常化させ、それは、4ヶ月以上に渡って空腹時血糖値144[mg/dl](8.0[mM])以下を維持しました。

空腹時血糖値の変化が半値になるまでの期間は、6.9日でした。HbA1cが50%減および75%減の値になるまでに要した期間は、それぞれ32日および63日でした。

以上のデータから、一定の血糖レベルを急速に別の一定の血糖レベルに変化させた時、HbA1cが安定した状態に至るまでには、4ヶ月の期間が必要であることがわかりました。

これは、HbA1cが過去4ヶ月間の血糖レベルを反映することを示唆するものです。

安定型HbA1cの生成は、高血糖状態から正常血糖になったことにより減少します。

一方、赤血球が寿命を迎えるまでの約120日、4ヶ月間は安定型HbA1cが残存しますから、高血糖状態時に生成した安定型HbA1cは、寿命を迎えた順に貪食細胞などにより処理されます。

また、HbA1cが50%減の値になった時期は、血糖レベルを急速に下げてから1ヵ月後、75%減の値になった時期は2ヵ月後です。

これにより、HbA1cレベルの「50%」は、過去1ヵ月間の血糖レベルが「責任血糖レベル」として寄与していると考えられます。

同様に、HbA1cレベルの「25%」は、過去1ヵ月時点から過去2ヵ月時点までの1ヵ月間の血糖レベルが寄与しており、残りの「25%」は、過去2ヵ月時点から過去4ヵ月時点までの2ヵ月間の血糖レベルが寄与していると考えられます。

近い過去の血糖レベルほどHbA1cへの寄与率が大きいので、HbA1cは過去1~2ヶ月の平均的な血糖レベルを反映する、と言われるのだと思います。

糖尿病の有無とHbA1c

糖尿病の有無を判断するには、慢性高血糖の確認が不可欠です。

慢性高血糖の確認

通常、空腹時血糖値とHbA1cを同一採血で測定して、1回の検査で判定することが多い。

  • 慢性:1ヶ月以内の異なる日に測定した血糖値が2回続けて同じ「型」と判定される場合など
  • 高血糖=血糖値が糖尿病域にある:経口ブドウ糖負荷試験(OGTT; oral glucose tolerance test)を行ない、血糖値の型判定基準により糖尿病型と判定される場合など

HbA1cは、過去1~2ヶ月の平均的な血糖レベルを反映する指標ですので、上昇したHbA1cは、慢性高血糖を反映する指標でもあります。

よって、HbA1cを糖尿病の診断に応用することに科学的妥当性はあるのですが、注意点もあります。

血糖値が高いほど、安定型HbA1c (HbA1cはこれを測定) の生成速度は増加しますが、その反応は不可逆であり緩徐であるため、安定型HbA1cになるのは不安定型HbA1cの一部です。

血糖値が低くなっても安定型HbA1cの生成速度は減少するだけで、反応は継続しています。

これでは、安定型HbA1cは増加する一方のようですが、他方、赤血球が寿命を迎えると安定型HbA1cは減少していきます。

このように、HbA1cは、血糖値以外の赤血球寿命などにも影響を受けるため、HbA1cと実際の血糖レベルが乖離する場合もあります。

例えば、急速に高血糖が改善した場合には、HbA1cが高値の方向に乖離しますし、急速に発症または悪化した場合には、逆に低値の方向に乖離します。

また、鉄欠乏状態ではヘモグロビンの合成が十分に行われなくなり、相対的にHbA1cは高値を示します。

したがって、HbA1cのみで糖尿病の有無を判断することは不可であり、血糖値による判断が必須となっています。

HbA1cと終末糖化産物

DCCTは、健常人に近い血糖レベルの維持は合併症の発症および進行を抑制することを示した臨床研究で、1983年から1993年にかけてNIDDK(米国国立糖尿病・消化器疾患・腎疾患研究所; National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases)によって行われました。

対象者を1型患者としたこの研究では、従来の血糖コントロールを行う群と従来より厳格な血糖コントロールを行う強化療法群の合併症発症リスクを比較しました。

この研究で、HbA1c(NGSP)は、血糖コントロールの指標として用いられました。

DCCT研究終了後、継続してEDIC(Epidemiology of Diabetes Interventions and Complications)という追跡調査が11年間行われました。

A群
  1. DCCT期間:従来療法 → 平均HbA1c(NGSP)9.1[%]
  2. EDIC期間:強化療法 → 平均HbA1c(NGSP)8.2[%]
B群
  1. DCCT期間:強化療法 → 平均HbA1c(NGSP)7.4[%]
  2. EDIC期間:強化療法 → 平均HbA1c(NGSP)8.0[%]

A群、B群ともEDIC期間の平均HbA1cはほぼ同じですから、合併症の発症リスクと進行抑制効果および心血管疾患発症リスクに有意な差は現れないと思われました。

しかし、結果は、強化療法を継続して行なったB群が有意にリスク減少していました。

EDICの研究者は、DCCT期間の良好な血糖コントロールの影響がDCCT後のEDIC期間中も持続したとして、持続性の良好な血糖コントロールの恩恵を metabolic memory という概念で呼びました。

見方を変えれば、持続性の血糖コントロール不良=慢性高血糖は、体に記憶されてなかなかリセットされない、と言うこともできます。悪い metabolic memory に寄与するものとして、次のようなことが挙げられます。

  • 糖毒性
  • 脂肪毒性
  • 終末糖化産物(AGEs)の蓄積

慢性高血糖を改善すれば糖毒性や脂肪毒性は解消していくのに対し、寿命の長い組織に形成されたAGEsは、残存し続けます。AGEsの蓄積は、metabolic memory を阻害する要素と考えられています。

血糖コントロール不良が持続すればするほど、メイラード反応によってHbA1cの生成が増加するので、AGEsの前駆体もメイラード反応によって生成されているはずです。