血糖値はグルコースの供給と消費で決まる
良い血糖コントロールを維持するためには、自分の体の中で糖がどのように流れているかをイマジネーションすることが大事だと思います。
体内の「糖の流れ」において、自分が血液中の糖を観察しているところを想像してみてください。
- 血糖値とは何ですか?
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- 血液中に含まれるグルコースの量=血漿グルコース濃度 [mmol/L] or [mg/dl]
血糖値は、糖尿病の……
- 代謝異常の程度を表している。
- 有無を判定するときの基準になっている。
- 代謝異常が治療によってどの程度改善したかを反映している。
血漿グルコース濃度は、生理的に動的な変化をしている値なので、「空腹時血糖値は126[mg/dl]でした」のように、状態を明示しないと意味のある値にならないです。
- 血漿グルコース濃度の全体像
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- 血液循環へのグルコース流入速度(グルコース出現)
- 血液循環からのグルコース除去速度(グルコース消失)
- 上記1.と2.の関数で表される。
グルコースの出現と消失
血液循環へ流入するグルコースの由来は、次の3つです。
- 腸管吸収(小腸から門脈へ)
- グリコーゲン分解(肝臓から血液循環へ)
- 糖新生(肝臓から血液循環へ)
血液循環からグルコースを除去する対象は、グルコースを利用するすべての細胞です。
骨格筋や脂肪組織は、インスリン効果でグルコースを多く取り込むことができ、脳や赤血球などは、インスリンに関係なくグルコースを利用します。
- インスリン依存性のグルコース取り込み(骨格筋や脂肪組織など)
- インスリン非依存性のグルコース取り込み(脳や赤血球など)
空腹時
空腹時とは、前夜から10時間以上の絶食が続いている早朝朝食前の状態を想定しています。ちょうど、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)の実施直前と同じ状態です。
肝臓のグリコーゲン分解と糖新生は、摂食時以外の絶食時や運動時のグルコース需要に応える供給源です。
絶食が始まって8~10時間は、肝臓のグリコーゲン分解がグルコースの一次供給源です。グリコーゲン貯蔵量は有限ですので、これ以上の絶食期間では、肝臓の糖新生に切り替わります。
摂食時
摂食時は、腸管吸収からのグルコースが大量に流入します。
小腸から吸収される食事由来のグルコースが最大の供給源なので、どのくらい速く「グルコース出現」するか、それは主に摂取物の胃内容排出速度で決まります。
食事をゆっくり摂れば、血糖値の上昇はなだらかになると想像できると思います。また、同じような効果として、α-グルコシダーゼ阻害薬は、小腸からのグルコース吸収を遅らせます。当然、食べる量・質も影響します。
腸管吸収からのグルコースがインスリン分泌を刺激して、肝臓のグリコーゲン分解および糖新生が抑制されます。グルコースの一部は肝臓に取り込まれ、グリコーゲン合成や脂肪酸合成の材料に使われます。
また、インスリン効果により、骨格筋や脂肪組織などのグルコース取り込みが促進され、骨格筋ではグリコーゲンが合成されます。
肝臓は、空腹時のグルコース供給源であり、摂食時にはグルコースを取り込むタンクの役割をしています。そして、インスリン(とグルカゴンの相互作用)によって制御されていることが、血糖値を決める要素において重要な点ですね。
また、食事はグルコース(=血糖)の主な供給源であり、運動(+インスリン効果)はグルコースを消費するので、糖尿病の治療にとって重要だということも理解してもらえたかと思います。