糖尿病は予防可能

糖尿病発症過程の血糖値は、正常レベルから「前糖尿病」レベル、さらに糖尿病レベルへと上昇します。

図1.糖尿病の自然経過:血糖値は正常域から境界域へ、境界域から糖尿病域へと上昇していきます。

  1. 体が十分なインスリンを作れない。
  2. 体がインスリンを効果的に使うことができない。
  3. 1.と2.の両方

このような状況になった結果、細胞が血液中のグルコースを取り込んで利用することができなくなり、グルコースが血液中に滞って増加するからです。

程度の軽い糖尿病に明確な症状は表れず、血糖検査無しに発症の確認はできないのですが、特定健診や職場の健康診断の血糖検査・スクリーニングで、「前糖尿病」状態の人は見つかります。

「前糖尿病」状態

糖尿病と診断されるほど高いレベルではないが、正常より血糖値が高い状態のこと。糖尿病の前兆という訳ではない。

  • 正常な人と比較して、2型糖尿病に進展するリスクが高い人が含まれる。
  • 同じように、動脈硬化による心血管疾患の発症リスクが高い人も含まれる。

2型糖尿病になりやすいという意味で、「糖尿病予備軍」と呼ぶことがあります。(1型は、発症のトリガー発動からインスリンがほとんど分泌されない状態まで急速に進展するので、「予備軍」状態をあっという間に駆け抜ける。)

実際には多くの人が「予備軍」のままで経過しますので、正常より少し血糖値が高い状態の「予備軍」の中に発症ハイリスク群がいて、そこから2型糖尿病に進展していくと考えられます。

図2.2型糖尿病発症のハイリスク群:「前糖尿病」状態または「糖尿病予備軍」のうち、リスク因子を持つもの。

何らかの「行動」によって発症ハイリスク群のリスク因子に介入した時、発症率が低下するのであれば、発症予防に効果があることが示されます。

2型糖尿病の発症を遅延または予防できる

糖尿病発症のハイリスク群3,234人を対象にした臨床研究「Diabetes Prevention Program(DPP)」の結果、次のことが示されました。(日本語の解説

  • 2型糖尿病の発症は、食事と運動を通した体重減少により遅らせるか予防できる。

発症ハイリスク群のリスク因子

研究の対象者全員は、以下のリスク因子を持っている人が選ばれました。

  • 「前糖尿病」状態(血糖値が正常より少し高い、いわゆる「糖尿病予備軍」)
  • 過体重(BMI≧25)や肥満(BMI≧30)

さらに、対象者の約70[%]に糖尿病家族歴があります。これらは、2型糖尿病の強いリスク因子です。

発症予防のための行動

研究の対象者を次の3つの方法にランダムに割り振って、糖尿病を発症したかどうかを追跡しました。

生活習慣介入群
  • 目標:体重を7[%]減らして、これを維持すること。
  • 行動1:低脂肪で低カロリーな食事を摂る。
  • 行動2:ウォーキングなどの中程度の運動を1日約30分を週5日、少なくとも週150分以上行う。
  • 指導:食事と運動について、最初の24週間は個別指導、その後は月に1度の個別指導やグループ指導。
メトホルミン群
  • 目標:特になし。
  • 行動:1日に2回、メトホルミン850[mg]を服用。
  • 指導:食事と運動について、標準的な情報と年に1度の個別指導。
プラセボ群
  • 目標:特になし。
  • 行動:1日に2回、メトホルミンの替わりにプラセボを服用。
  • 指導:食事と運動について、標準的な情報と年に1度の個別指導。

DPPの結果

糖尿病発症のハイリスク群に該当する人が、定期的な運動と低脂肪低カロリーの食事を通した体重減量を行うと、2型糖尿病の発症を遅らせる、または避けることが可能、ということをDPPの結果は示しました。

追跡期間内1年あたりの糖尿病発症率と発症リスク減少率(プラセボ群と比較して)は、次のとおりです。

  • 生活習慣介入群:発症率4.8[%]、減少率58[%]
  • メトホルミン群:発症率7.8[%]、減少率31[%]
  • プラセボ群:発症率11.0[%]、-

DPPの結果は、「健康的な食事運動の継続はインスリンの働きを良くする」ことを証明したとも言えます。

しかし、1対1の強力な個別指導を半年間行っても、目標とする体重の7[%]の減量を達成できたのは半数です。4人に1人は週150分以上の運動ができていませんでした。生活習慣を改善して続けることの難しさを感じます。