DCCTに見るHbA1cおよび血糖日内変動のデータ

自分以外の糖尿病患者のHbA1cや血糖日内変動のデータは、なかなか目にすることはできませんが、糖尿病の大規模臨床研究DCCT(Diabetes Control and Complications Trial)の研究報告の中にそのデータはあります。

自分の治療内容を考えるときのベースデータとして、参考になります。

糖尿病患者のHbA1cや血糖日内変動のデータ

HbA1c値 - 従来療法と強化療法の比較

Panel Aは、ひと月に1回測定されるHbA1c(NGSP)を3ヶ月分まとめたデータの分布の中央値で、従来療法を■で、強化療法を◆で示しています。

また、1年毎に垂直の線で示されているものは、1年間に測定されたHbA1cデータ分布のばらつきを表わしていて、統計で言うところの四分位数です。

このグラフは、平均値ではなく中央値で表わされていることに注意してください。平均値は、外れ値や極端に広い裾野を持つデータの場合に影響を受けやすいですが、中央値は、外れ値の影響を受けにくく、分布の実態をより正確にあらわすことができます。

強化療法群は、最初の半年で底値に達したことがわかります。

強化療法群のうち44[%]の患者は、目標であるHbA1c(NGSP)6.05[%]以下を達成したか、研究期間内で少なくとも1回は達成しました。

強化療法群のうち5[%]の患者は、平均値でHbA1c(NGSP)6.05[%]以下を達成しました。

これらのことはグラフからは読み取れませんが、HbA1c(NGSP)6.05[%]以下という目標は「やればできるものですよ」と暗に言っているのかもしれません。

現在の日本における血糖コントロールの目標値は、優レベルでHbA1c(NGSP)6.2[%]未満ですから、優レベルを維持することは相当厳しいですね。DCCTのデータを見ると、長い期間を継続して目標をクリアすることは難しいようですが、短期では目標をクリアできそうです。

筆者の場合、6.2[%]以下だったのは退院直後の半年位だけで、あとはずっと6.5[%]から9.0[%]の間を行ったり来たりしています。

好きなものを好きなだけ食べるためにインスリン量を調節し、太らないように運動する。体を動かす機会が少ない自分にはできそうにありません。せいぜい食べ過ぎたときにインスリン量を増やすくらいです。

血糖日内変動 - 従来療法と強化療法の比較

Panel Bは、1日を区切りとして朝食前、朝食後、昼食前、昼食後、夕食前、夕食後、就寝前の7回測定した血糖値を患者毎に各々3ヶ月分をまとめて平均し、これらの平均したデータの中央値を示しています。

また、垂直の線は、データ分布のばらつきを表わしています。他の患者の血糖値など見ることはできないので、この図は参考になります。

従来療法群のHbA1c(NGSP)中央値が約9[%]、強化療法群のHbA1c(NGSP)中央値が約7[%]で、血糖日内変動の従来療法と強化療法の差がHbA1c(NGSP)2[%]分だとみなすと、HbA1c(NGSP)6.05[%]は食前血糖値で100[mg/dl]を少し超える位になるでしょうか。

現時点で糖尿病歴1年未満の私の数少ないデータを見ても、食前血糖値の平均が100[mg/dl]前後のときは6[%]前後になっています。食前血糖値に注目したのは、食事の影響を受けにくいからです。

従来療法と強化療法の内容

ここで言う「従来療法」は、糖尿病の大規模臨床研究(DCCT)が行われた1983年当時の米国における治療のことです。

従来療法

治療内容は、以下のとおりです。

  • 毎日1回または2回、混合型や速攻型インスリンを注射する。
  • 毎日、尿糖または血糖値を自己測定する。
  • ダイエットと運動の教育を受ける。
  • インスリン量の調整は行なわない。

治療目標は、以下のとおりです。

  • 尿糖が出ないこと。
  • 高血糖の症状である多尿、口渇、多飲などが現れないこと。
  • ケトン体が出ないこと。
  • 適正体重を維持すること。
  • 低血糖を起こさないこと。

生命の危険もある重篤な低血糖およびケトアシドーシスを予防しつつ、治療の具体的な数値目標はありませんけれども「尿糖が出ないこと」から推測すると、随時血糖値200[mg/dl]を越えない程度が目標なのかなと思います。

強化療法

治療内容は、以下のとおりです。

  • 1日3回以上のインスリン注射またはインスリンポンプでのインスリン管理を行なう。
  • インスリン量は、少なくとも1日4回以上の自己血糖測定や食物摂取量、運動量に応じて調整する。

治療目標は、以下のとおりです。

  • 食前血糖値が70~120[mg/dl]
  • 食後血糖値が180[mg/dl]未満
  • 毎週午前3時の血糖値が65[mg/dl]以上
  • 毎月測定するHbA1c(NGSP)が正常範囲(6.05[%]未満)であること。

研究のためとは言え、具体的な数値目標が設定されました。高血糖状態にある時間の長さがHbA1cに反映しますので、インスリン注射で血糖値が上下する1型糖尿病患者にとって、毎日の血糖値の管理は必須ですね。